うちわと言えば、日本の夏には欠かせない物の一つです。あの形状といい、扇ぐ事で涼を取る、という日本人の風情そのものに似合っていて、私も大好きな日本の物の一つです。自然の風を自分の手で作り出す事によって、夏の暑さにも逆らわず、共存する、という心の表れであるのではないでしょうか。実際に、風通しの良い日本家屋には、浴衣とうちわで涼を取る姿がとても良く似合っています。
さて、私の出身地では、毎年多くの夏祭りが行われます。神社に夜店が立ち並ぶ夏祭りだけで三つほど開かれます。また、海で花火を打ち上げたり、砂浜に線香を立てて絵や字を描き、死者の魂の冥福を祈る、という祭りも開かれます。その度に必ず配られるのがうちわです。
その配布されるうちわには、その祭りに協賛や協力をした店舗や団体の名前が連ねてあります。私の同級生は、自営業の家の子供が多かった為、同級生の家のお店の名前もしばしば見かける事がありました。また、私の同級生のご両親が、私の父と同級生であったり、先輩であったりする事も多かったため、うちわに書かれている名前を良く父と見て、あの子の家のお店が書いてある、等言い合っていました。
また、そのうちわは祭りの配布用に製作されたものですが、とても作りが良かった事を覚えています。持ち手は竹で、本体の紙の部分は和紙で出来ていました。なので、私の地元の人達は、必ずそのうちわを祭りの時は貰っていました。その時から少し経ってから知った事ですが、あの配布用のうちわは、私の同級生のお祖父さんが作ってらっしゃったものだったそうです。その方は亡くなられてしまいましたが、地元商店街の自治会長さんを兼任されており、宣伝にもなるし、皆も喜んでくれるから、とうちわを製作していたそうです。そのお祖父さんの親切で、粋な心によって、今日まで祭りでうちわは配布され続けています。